自然資源管理学研究室 Natural Resource Management lab.

セミナー報告(2019年12月5日)

ESG投資でどうなる世界の森林 ~お金の流れが変われば森林減少は止まるのか~

日本国内でESG投資がいよいよ本格化しようとしています。2015年、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名したことに端を発し、国内の機関投資家や資金運用機関を巻き込んだ官民をあげた動きに発展しています。 このESG投資が本気で気候変動対策や人権問題の解決に取り組みはじめていて、そこには気候変動に大きな影響を与えている森林減少防止対策も含まれています。さらに世界の金融資本市場はESG投資の先を行く、サステナブルファイナンスを目指した動きも見せており、そこでも森林減少抑制対策は議論されています。
本セミナーでは、世界の金融資本市場の動向や日本国内の金融界の動き、そして森林資源や森林地域に由来する資源を調達している企業にとって、今後どんな対応が求められるようになるのかなどについて、専門家を交えて検討を行いました。

【開催概要】
日 時:2019年12月5日(木)13:30~17:00
会 場:早稲田大学 小野記念講堂
(東京都新宿区西早稲田1-6-1 27号館 地下2階)

【プログラム】
<第一部>金融が取り組むサプライチェーン改革

 

<第二部>パネルディスカッション

~金融の動きを受けて木材調達企業はどう動くか~
・モデレーター:九州大学熱帯農学研究センター 准教授 百村帝彦
(登壇者)
・高崎経済大学経済学部教授 水口剛 様
・りそな銀行アセットマネジメント部 責任投資グループグループリーダー 松原稔 様
・一般社団法人コレクティブ・アクション 代表理事 松川恵美 様
・住友林業株式会社サステナビリティ推進室 室長 飯塚優子 様
・積水ハウス株式会社環境推進部 部長 佐々木正顕 様

【主催】
早稲田大学環境総合研究センターW-BRIDGEプロジェクト、九州大学熱帯農学研究センター、国際環境NGO FoE Japan

【セミナー概要】

木材調達企業、金融関連企業、コンサルティング企業、研究者・研究機関、環境NGO・NPO、学生など幅広い分野から参加者数は106名の参加を得た。

第一部の講演ではまず、高崎経済大学経済学部教授の水口剛様に「ESG投資を含む金融界の動きの概要」と題してお話いただいた。ESG投資の火付け役となった国連責任投資原則(PRI)の流れから、近年の議論に注目が集まっている欧州委員会のタクソノミーやサステナブルファイナンスの話まで、広範に金融界の全体的な背景や流れについて概説いただいた。
次に、りそな銀行アセットマネジメント部責任投資グループグループリーダーの松原稔様に「金融機関によるエンゲージメントによるサプライチェーン改革」と題してお話いただいた。機関投資家等、大きな資金を預かり、長期的に資金を運用する立場からESG投資の現状や可能性、そして長期投資家として企業とのエンゲージメントにより、パーム油のサプライチェーンにおける環境配慮促進の取り組みについて、具体的な事例を交えてご紹介いただいた。
さらに、一般社団法人コレクティブ・アクション代表理事の松川恵美様に「ESG投資の格付け機関は企業の何を見ているのか?」と題して、お話いただいた。松川様からは機関投資家や長期投資家などが参考にしている格付け機関の評価、いわゆるESG調査の現状や、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)のCDPフォレストを事例に取り、具体的にどんな評価がなされているのかについてお話いただいた。

第二部のパネルディスカッションでは、九州大学熱帯農学研究センター准教授の百村帝彦のモデレーターにより議論が進められた。住友林業株式会社サステナビリティ推進室室長飯塚優子様、積水ハウス株式会社環境推進部部長佐々木正顕様にもご登壇いただき、金融界の視点、格付け機関の視点、そして林産物である木材を調達する企業の視点からの議論を展開していただいた。進行する際は、以下の3つのテーマを設けて、議論を深めることを試みた。

テーマ1: 調達企業・格付け機関・機関投資家は、森林減少対策にどのようにコミットしているのか
テーマ2: 調達企業・格付け機関・機関投資家は、森林減少対策を一層進めるために何ができるのか
テーマ3: 「持続可能な原材料調達」、特に木材調達実現に向けた課題・将来展望について

登壇者から積極的に忌憚のない意見・発言をいただき、議論を進めることができた。

本セミナーは早稲田大学環境総合研究センターW-BRIDGEプロジェクト「森林減少ゼロに寄与するサプライチェーン管理と持続可能性に配慮した原料調達の促進」の一環として開催しました。

関連リンク先

過去(2020年6月1日)のウェビナー「持続可能な木材調達のためのサプライチェーン管理~リスクフリーな木材製品をエンドユーザーに届けるために~」の報告はこちらをご覧ください。

過去(2019年5月22日開催)のセミナー「SDGs時代の木材サプライチェーンの新潮流 ~持続可能な製品市場に対応する木材デューディリジェンスとは?」の報告はこちらをご覧ください。

過去(2018年4月26日開催)のセミナー「ESG時代の責任ある木材調達と製品づくりとは? ~SDGsの達成に向けた木材デューディリジェンスを考える」の報告はこちらをご覧ください。

過去(2017年4月17日開催)のセミナー「世界の違法伐採問題と日本の木材消費:クリーンウッド法の効果的な実施に向けて」の報告です。詳細はこちらをご覧ください。

公表した「木材デューディジェンスガイダンス」ならびに「木材デューディリジェンスハンドブック」はこちらをご覧ください。