自然資源管理学研究室 Natural Resource Management lab.

研究

政治生態学の視点からの自然資源管理

熱帯諸国の自然資源は、「管理しようとする政府」、「利用しようとする企業」、「保全しようとする援助機関やNGO」、そして「日常的に自然資源を利用する地域住民」と、さまざまな利害関係者が異なる意図で自然資源にアプローチを行っている。それらの相互関係・パワーバランスにおいて、さまざまな調整や軋轢がある。これら事象に対して、政治生態学のアプローチを用いて検討・研究をおこなっている。具体的には、保護地域管理政策の運用、コミュニティ林業・少数民族共有地所有権による紛争の回避、土地・森林利用における地域住民と外部利害関係者とのせめぎあい、などである。

違法伐採の排除への取り組み

途上国での違法伐採の蔓延に対して、欧・米・豪など先進各国では規制法で対策を打ち出し、日本に違法材流入の恐れが増している。そこで日本においても、クリーンウッド法など、違法材を排除した対策が実施され始めた。このような中、クリーンウッド法の制度と運用実態との乖離、木材を取り扱う民間企業による対策を実施するインセンティブ(CSR、ESG含む)とその実現可能性、そしてエンドユーザーである一般消費者の認識を検討しつつ、研究を進めている。
また環境NGOとの共同事業として、セミナーの開催やデューデリジェンスに関するガイダンスの策定も行った。
さらに、木材輸出国である東南アジアのラオスにおける木材流通の対応策についても検討をおこなっている。

●2020年6月1日に開催したウェビナー「持続可能な木材調達のためのサプライチェーン管理~リスクフリーな木材製品をエンドユーザーに届けるために~」の報告です。詳細はこちらをご覧ください。

●2019年12月5日に開催したセミナー「ESG投資でどうなる世界の森林 ~お金の流れが変われば森林減少は止まるのか~」の報告です。詳細はこちらをご覧ください。

●2019年5月22日に開催したセミナー「SDGs時代の木材サプライチェーンの新潮流 ~持続可能な製品市場に対応する木材デューディリジェンスとは?」の報告です。詳細はこちらをご覧ください。

●2018年4月26日に開催したセミナー「ESG時代の責任ある木材調達と製品づくりとは? ~SDGsの達成に向けた木材デューディリジェンスを考える」の報告です。詳細はこちらをご覧ください。

●2017年4月17日に開催したセミナー「世界の違法伐採問題と日本の木材消費:クリーンウッド法の効果的な実施に向けて」の報告です。詳細はこちらをご覧ください。

●木材デューディジェンスガイダンスならびに木材デューディリジェンスハンドブックを作成、公表しています。詳細はこちらをご覧ください。

地球温暖化問題における森林保全の在り方

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)での交渉過程において、REDDプラス(途上国の減少・劣化を抑止し温室効果ガス排出の削減)という新しい森林保全の概念が誕生した。REDDプラスでは、森林からの「炭素」という新たな価値が創出され、その取り扱いをめぐって先進国や途上国などの利害関係者がせめぎあいを行っている。これらREDDプラスにおける利害関係者の参画手法や利益分配に関する研究などを、東南アジアを中心に研究を行っている。
REDDプラスでは、グローバルな地球環境問題が、熱帯アジアのローカルレベルの地域住民に対して大きな影響を与えており、異なるスケール間の相互関係についても関心を持っている。

昆虫食に関する研究

昆虫食は東南アジアにおいて広く見られますが、とりわけラオスでは昆虫を日常的に消費する人口の割合が世界で最も高いとされています.コオロギ・ケラ・バッタや糞虫などは田んぼや草地に生息し、ゲンゴロウやタガメといった水生昆虫は水路や池などの水場に、カブトムシ・タケムシ・ツムギアリなどは疎林や二次林に生息しています.これらの昆虫は、人為的な自然環境、とくに里地や里山などのもとで採取されています.
これら昆虫食は、村人たちの生活を支えるセーフティーネット(生きていくための安全な仕組み)としてだけでなく、地域独自の食文化としても長年根付いてきました.昆虫は多様な栄養素を含み、簡単に手に入ることから、村落住民にとって身近で重要なタンパク源となっています. また、昆虫は飼料から食用タンパク質への変換率が効率的なことや、飼育過程で排出される二炭素酸化が少ないという特性から、環境に負荷が少ないとされています.環境問題に対処するための解決策としても注目されており、2013年には国連食糧農業機構(FAO)が昆虫食の可能性を高く評価する報告書を発表しました.これを契機に、昆虫食は国際的な注目を集め、環境に配慮した次世代のタンパク源としての優位性が再評価されています.
しかし、ラオスでも経済発展や農業の近代化により、昆虫食の習慣が変化しつつあるとされています.人々の生業形態や生活スタイルの変化、また農薬の使用拡大など生態環境の変化が、昆虫の生息地や分布に影響を与えているされています.
そこで、ラオスの村落における昆虫食の実態、そして昆虫食がラオスにおける持続可能な生活基盤や文化において果たす役割について見据えることを目指しています.